これまで出会った人の中で強烈な印象を受けた一人が、林 同春さんだ。中国福建省生まれ、9歳で日本に渡り、苦労を重ねながら実業家として成功し、日中友好に力を尽くした。
2009年に84歳で亡くなったが、神戸にとどまらず日本を代表する華僑の一人だった。初めてお会いした時、事前に「大物」と聞かされていたので、緊張した。
目の前に現れた林さんは背筋の伸びた長身で、こちらをまっすぐ見て、張りのある声でご挨拶してくださった。そして、こちらの緊張を見抜いたのか、にっこりと微笑み、「お茶でも飲みましょう!」と仰った。
そんな懐かしい林さんを思い出したのは、『孫文 華僑 神戸』という神戸大学出版会の新刊で、著者の安井三吉さんが書いた林さんへの追悼文を読んだからだ。そこに記された林さんの思い出は、私の記憶と重なる。器の大きな人だった。
県立舞子公園に立つ孫文記念館(移情閣)。
林さんゆかりの建物を見るたびに、大きな声で明瞭に話す林さんの姿が思い起こされる。お茶を飲みながら、「これ、おいしいよ」と小瓶に入ったブルーベリージャムを勧めてくれるチャーミングな人でもあった。(G)