雪が降ることが珍しい、積もることなんて数年に1度あるかないかという兵庫県南部に、大雪が降りました。鉄道は大混乱。早めに職場を出たのに、家の最寄り駅に着くまで普段よりかなりの時間を要しました。疲れ果てて電車を降りた私を出迎えたのは、白く染まったホームに、大粒の雪が横殴りに降る風景。この中を今から家まで帰るのかと、少々げんなりしました。
傘が無かったので、コートのフードを目深にかぶり、意を決して雪の中を進みます。地面の上には雪が積もり始め、気を抜くとこけそうになる中、よちよちと歩きました。駅が遠ざかり、いつもなら街灯の灯りのみの薄暗くなる道に入った時、ふと気づきました。いつもより、周囲が明るく見える。雪が光を反射しているからなのでしょうか。暗いけど明るい風景は、寒さも一瞬忘れさせてくれました。
小説などで「雪の夜は明るい」という表現を読んだことがあります。その表現通りの光景が目の前に広がっていました。読書体験と実体験が重なった瞬間です。不思議なもので、慣れない夜の雪道が楽しくなりました。
まあ、私が読むのは推理小説が中心なので、大抵その後は事件が起きるのですが……。幸い、そちらは体験することなく、無事に家にたどり着けました。体中に雪が積もり、雪だるまになっていましたが。(つ)