藤木明子さんから届く原稿は、いつもブルーインクの万年筆で書かれていた。
楷書の大きな文字、飾り言葉を排したリズムのあるセンテンス、優しい表現の中に時折のぞかせる厳しいまなざし……読みやすいけれど、容易に読み進められない文章。
さすが詩人だなと思った。
編集という仕事は、さまざまな文章に接する。
最初の読者として原稿を読ませていただく。
時に分かりづらい文章もあるが、書き手の個性も大事だ。
その見極めが、編集の腕の見せ所。
藤木明子さんは2017年末に亡くなった。
最後に受け取ったのは、献本に添えられた手紙。
ブルーインクで記された文字は、少し小さくなった気がした。(G)