ユニークなエッセイ集がある。タイトルは『どこ吹く風』。「怖いもの知らずの夫婦句集&エッセイ」と副題が付いている。
橋本吉博さん征子さんご夫妻が、日々の出来事や思いを綴った小冊子である。2009年から発刊を続け、最新号でNo.68を数える。文庫サイズの24ページ。パソコンで版を作り、表紙のカットから印刷、製本まで自ら手掛ける。文字通りの自費出版である。
子や孫、友人たちに読んでもらえたらと、遺言代わりに作り始めた。時系列にはこだわらない自分史風のエッセイと俳句が収められている。
決して大仰なことを書いているのではない。他愛もないこと、どの夫婦、家庭にでもあることを題材にしている。けれど、この二人にしか書けない視点が、ある。わずか24ページだが、読み手に話しかける温かさがこもっている。時には悲しみをこらえ、時には怒りを抑え、基本は朗らかに。小冊子だが13年間、出し続けている。
自費出版というと書籍のイメージが強いが、こんな自費出版もある。
傘寿を迎えた吉博さん。老いと病は避けて通れないが、そんな心配も「どこ吹く風」である。(G)
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